たくさんの展示の中でも特に私が気に入ったのが、狩野元信の『四季花鳥図』(16世紀・大仙院)。
作品名の通り『禽(とり)』のエリアに展示されていた、大きな4枚の絵です。
大きな松の木と滝がある淡い水辺の風景の中に、何匹もの鳥が羽を休める、和やかで上品な作品で、
霞みがかった背景とは対照的に、鳥や草花はくっきりと鮮やかに描かれていて、写実的ながらも幻想的な雰囲気がします。
手前の松と遠くの湖畔との奥行きがとても自然に表現されていて、目の前に立つと窓から外を眺めているかのような空間の広さを覚えます。
この色の濃淡や細かい筆遣いは、こうして間近で観てこそ感じられるものです。
何せ大きな絵でしたから、左端からじっくり眺めて「綺麗な絵だなぁ」とひたすら感動していました。
しかし絵の右端に置かれた解説文を読んでみると、
『~松の木にとまる鳥たちに踏まれた哀れな虫は必見です。』の文字。
「え!?」と驚いて左端に戻ってみたら、確かに松の幹にとまる鳥の足元には踏み付けられた哀れな虫の姿が。
間近でじっくり観ていたはずなのに、全く気付きませんでした。
私が目を細めて探していると、多分絵心のある方であろう老人が、そこそこと指差して教えてくれました。
洗練された上品な絵かと思いきや、こんなところに小さな遊び心が隠されていたとは・・・。
このことを知ると、可愛いらしく観ていた松の木の鳥たちが少し意地悪そうに思えてきます。
この絵の傍には、狩野派の『鳥類図巻』たるものが展示されていました。
そこには色々な種類の鳥の姿が様々な角度・体勢で描かれていて、メモ書きのようなものまでありました。
鳥を正確に描くための研究ノートでしょうか。
古人の研究熱心な様子が垣間見れて、素直に感心しました。
他にも多くの動物の作品が展示されており、さながら動物園のような賑やかさでした。
ちなみに長澤芦雪の作品は、「鹿」と「虎」と「虫」のエリアに展示されていました。
拡大した蚤が描かれた扇面は、彼らしいユーモアのある作品でした。
動物という分かりやすく親しみやすいテーマで、深く考えずに楽な気持ちで観ることができた展覧会でしたが、京博(キョウハク)のHPで見ると、これが初の動物特集だったのだとか。
個人的にはなかなか面白かったので、できればまたやってほしいですね。
100点以上の動物や虫の作品が集まった、ボリュームのある楽しい展覧会でした。
日差しが強く暑い日でしたが、博物館の中は涼しく静かで、夏休みの過ごし方としては案外理想的かもしれません。